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M&A コラム&インタビュー

安東泰志のOn the horizon──投資ファンドの実像

安東泰志氏 ニューホライズンキャピタル株式会社 取締役会長兼社長

安東泰志氏

ニューホライズンキャピタル株式会社 取締役会長兼社長

第28回「独立系PEファンドの育成は日本を救う切り札となる」(2010/03/11)

 これまで27回にわたって、PEファンド運営の現場から日本の企業金融の様々な側面に触れてきました。特に前回はPEファンドを巡る様々な誤解に触れつつ、独立系PEファンドの活用がいかに日本の企業金融の円滑化や国民の金融資産運用状況の改善に有益であるかをご説明しました。

 今回はこれらを踏まえて、より大きな観点から独立系PEファンド育成の重要性を総まとめしておきたいと思います。

1 独立系PEファンド育成が必要な理由

(1)日本の資金の流れを変え、企業金融の円滑化が成し遂げられること

 日本は政府が巨額の負債を抱えつつ、長年にわたる低成長に苦しんでいます。半面、日銀の量的緩和もあり、銀行にはお金が潤沢にあります。また、公的部門である公的年金・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険、公的な色彩が強い年金基金に、合計で約500兆円もの家計部門の資金が預けられています。これらのお金の多くが国債を買うために使われているため、債務が国内総生産(GDP)比で世界最悪の水準にありながらも、日本の国債は現在のところ大きな格下げなど深刻な問題に直面していません。

 しかし、これが何を意味するかと言えば、家計部門の金融資産の大半は国が吸い上げて非効率な公共事業などに使われる一方で、企業には資金が流れていないということです。

 「企業に資金需要がないから国が家計部門のお金を吸い上げて公共投資をするのは当たり前」「金融をもっと緩和すべき」などの議論をする人たちもいますが、本末転倒の議論だと感じます。「卵が先か鶏が先か」ですが、企業はヒト・モノ・カネの経営資源がそろっていれば、必ず前向きな投資をしようとするものです。そして企業の投資には国の公共投資とは違ってROE(自己資本利益率)目標がありますので、お金をはるかに効率的に使うインセンティブを持っています。いわば金融面での「サプライサイド」の改革を行うことが必要なのです。

 また、どんなに金融緩和をしても、それが銀行にとどまって(銀行が国債を買っているだけで)肝心の企業に流れない限りは、企業金融の緩和にはつながらず、経済の活性化にはなりません。企業の資金調達には負債性と資本性の調達があります。企業にとっては負債性の調達、特に銀行借り入れが最も簡単なのですが、現在の銀行は金融庁の自己査定マニュアルなどの制約により、企業の財務状況に応じた格付けと、それに従った貸し付け方針に従うしかなく、結局は企業の財務が強くない限り借り入れは難しい状況です。企業の財務を強くするには資本性の調達をしなければならないのですが、それを機動的に可能にするのは、独立系PEファンドをおいてほかにありません。

 すなわち、日本の資金の流れを一部でも独立系PEファンドに流す仕組みを築き、PEファンド経由で企業に資本性の資金を導入することによって、結局は銀行借入もスムーズになるのです。それなくして銀行に「貸せ、貸せ」と迫っても、企業金融が円滑になるはずはありません。

(2)企業のガバナンス改革が成し遂げられること

 日本でもようやくコーポレートガバナンス(企業統治)の議論が活発になってきましたが、独立取締役や独立監査役の導入など形式面の議論にとどまっている感があります。それさえも、会社側は「社外の人に何が分かるか」という抵抗を示しています。

 そもそも日本独自の風土として「サラリーマン文化」が蔓延(まんえん)する企業においては内輪の論理を優先し、社外の目より社内の調和や年功序列を重んじる傾向にあると思います。仮に社外の目を気にするとしても、最も重んじられるのは債権者である銀行の意見であることが多く、一般株主をはじめとするその他のステークホルダー(利害関係者)を日常的に意識しているとは思えません。

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