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ビジネスコラム |
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石川県加賀市等を産地とする九谷焼は、約350年前に創始された古九谷をルーツとする伝統工芸です。その古九谷の精神を大切にしながら、現代ならではの新しい作品を提示し続けているのが、1870年に創業された「今九谷窯」です。この今九谷窯に、昨年の春、新しい代表者が生まれました。その若者は26歳。しかも、彼の仕事は、磁器作家ではなく、プロデューサーです。その挑戦には、日本の伝統工芸やものづくりにとってのヒントがたくさんあります。
世界に通用する伝統工芸品を集団で造り出す
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| 禅九谷コレクション |
九谷焼というと色鮮やかな食器を思い浮かべますが、今九谷窯は九谷焼の伝統的な技術を用いながらも、新しいデザインを提案しています。例えば、「禅九谷コレクション」は、白磁をベースとしたモノクロでシンプルなデザインとなっています。
この新しいデザインは、今九谷窯の代表兼プロデューサーである中村太一さん(26)のコンセプトから生まれました。
「伝統工芸企業は、ものづくりを行なっていると考えられていますが、私たちは哲学・世界観を創っている、フィロソフィーメーカーであると考えています。物があふれている今の現代、お客様は、単なるモノではなく、より豊かに幸福になれる新たな価値を求めています。禅九谷コレクションでは、海外でも通用する禅文化をもとに、私たちなりの哲学や世界観を形にしようと考えました。具体的には、本来、道具である工芸品の本質(使い勝手)を際立たせるために、色絵磁器から敢えて色と絵を省きました。そして、器の口を付ける部分には滑らかで清潔感のある白磁、手が触れる部分には柔らかで温かみのある土ものの質感と、口と手それぞれが最も心地良いと感じる異なる質感を一つの作品の中に両立したのです。「世界中のお客様の、五感のすべてを感動で満たす」私たちは、そのために飽くなき挑戦をし続けています」
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| 今九谷窯代表兼プロデューサーの中村太一さん |
プロデューサーの中村太一さんは、窯そして作品の魅力をお客様に最大限伝えることに責任を負っていますが、個人作家として作品を造っているわけではありません。窯の作品は、太一さんの父でアーティストである中村元風さんを中心に、絵付けと成型を担う職人が、今九谷窯の内と外併せ、総勢十数名の役割分担によって生み出されています。
「陶磁器においては、一般に、個人が造った作品が良いものというイメージがあるかもしれません。しかし、色絵磁器造りにおいては、各工程の高度なプロフェッショナルが結集して初めて完成度の高いものができるというのが持論です。その意味では、色絵磁器造りとは、シェフだけでなくソムリエやパティシエ等がいて初めて成立する、フレンチのフルコースを作るようなものと言えるのではないでしょうか。
さらに、作品の創造と窯の経営プロデュースを一人の人間が両立するのは困難です。アーティストには世間の常識を離れ、大きくバランスを崩して初めて到達できる境地が求められます。その一方で、経営プロデュースにはバランスが不可欠。プロデューサーである私は、お客様の嗜好(しこう)やライフスタイルの変化等、市場の声を小まめに報告し、アーティストである父は、ものづくりの研究開発の成果を逐一報告します。2人を中心に、絵付けと成型各部門の責任者を交えた4人が、コミュニケーションを密に取ることで、同じ方向を向いた作品造りに取り組んでいます」
先に挙げた「禅九谷コレクション」も、太一さんが海外展開を見据え、海外の消費者の嗜好を多面的に分析して生まれたコンセプトと、それを具現化する職人の技術が融合して生まれたのです。そして、今九谷窯は、2005年より、欧州向けの和食器コレクション製作プロジェクト、ロンドンのショップでの常設展示等で高い評価を得ており、また、陶磁器で有名な中国・景徳鎮における国際陶磁博覧会に招待出展されています。
「海外進出を行なうのは、人口減少が進む国内市場に依存しているだけでは衰退するので、その状況の打開という意味もありますが、それ以上に、日本初、アジアでも初の世界的なラグジュアリー(高級品)ブランドを創り出したいと考えているからです。日本は伝統工芸王国を標榜しているにも関わらず、伝統工芸発のブランドは、現在、世界中のどのメインストリートにも、国内高級デパートの1階にさえ、出店はほとんどありません。ルイ・ヴィトンやエルメス等、欧米の伝統工芸から生まれたラグジュアリーブランドに大きく差をあけられている。私たちはそれらに匹敵する存在になりたいと考えています」
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